宮司だより

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  • 【No.415】2012.02.20
以前、学校の校庭が土から天然芝に変わると言って、あれこれ心配している親御さんがいた。
天然芝はメンテナンスに手間とお金がかかるというデメリットはある。学校によっては親御さんへの負担も出てくるのかもしれない。
しかし、転んでも擦り剥かないし、頭を打っても土よりもクッションになってくれる分、安全だし、真夏に裸足で歩けば気持ちいいし・・・
校庭の芝生化の良い点を挙げればきりがない。
にもかかわらず、あり得もしない小さな危険を探し、その危険を過大に評価して、わざわざ否定的な立場に身を置くのを不思議に思ったことがある。
子供の安全を考えているのか、自分たちに降りかかる負担が嫌なのか、変化を受け入れるのが怖いのか、お役人の押しつけにはとりあえず反対したいのか、私にはまったく理解できなかった。

今、4月からの武道の必修化に向けて、指導者の不足、怪我の発生を未然に防ぐことなどの課題について論じられている。
武道の必修化は芝生ほど簡単ではないかもしれない。
しかし、メリットは沢山ある。
「姿勢よく正座し、姿勢よく礼をする」(姿勢や礼などの形)、「礼に始まり礼に終わる」(礼の心)、「運動不足の中学生に運動をさせる」、「体力のない中学生に体力をつけさせる」、「受け身を身に付ける」…

私の中学時代、武道は必修で3年間毎週の授業を受けた。
進学した高校も、偶然にも武道が必修だった。
選択したのは柔道だったが、授業でやることは正座、礼、受け身が柱だったような気がする。
技は、型を学び、決まりに従って型を試すだけ。
自由に戦う乱取りなどをしたのは高校2年生の時ぐらいではなかったろうか。
高校時代は、柔道の授業で腕立て伏せや逆立ちもやらされた。

受け身中心だったからこそ、ラグビーという激しいスポーツをしても頭を守れたのではないかと今では思う。
例えば、真後ろに転ぶと頭は重いので後頭部を地面に打つ危険があるが、柔道で習った受け身のお蔭で、タックルを受けて倒されても後頭部を打ったことは一度もない。

日本中の中学生を柔道部員にする訳でもなく、体育教育の一環として行うのだから、その限度を越えない範囲で指導すれば良いではないか。
フランスの柔道指導者の資格が厳格であるという話を持ち出して、準備不足や危険性ばかりを考えていては、教えられる当の中学生たちに恐怖心や不信感が芽生えてしまい、身につくものも身につかなくなってしまう。
柔道など別に学ばなくても良いのだ。
柔道と言う題材を使って体を動かし、礼を学び、受身を身につける。それで十分ではないか。
| 2012-02-20 | 宮司だより | 記事▼ |